2015年11月24日火曜日

文豪札の裏表

いわゆる文豪とは夏目漱石とかドストエフスキーとか、
プルーストとかエミリー・ブロンテとかです。
とくにどこからどこまでとも決めず、完全にぼくの主観です。
ぼくは小説に関してすごく詳しいのかというとそこまででもありませんが、
一般的な人よりは好きでよく読む方だと思います。

その経験を活かして文豪札を作ろうという考えです。
具体的にはフォトフレイムなどを使って表には顔写真、
そして裏にはその作家が小説中で書いた名文章を引用する。

この“名文書”を裏表で載せるというのが画期的です(自分で言う)。
ハンバーガー屋の写真立てのアイデアを発展させて。
ぼくが小説中の心を打たれた文章を引用して、
お客さんが注文を待っている間、
写真立てに引用された一文を読んで時間つぶしなどができるという代物です。

ピザを待っている間に、
ドストエフスキーの小説に現れる個性的な人物が楽しめるような文だったり、
宮沢賢治のファンタジーな言葉の組み合わせを暗唱できるようにしたいと思います。
どうですか?
たまりませんよね?

いや、もしかしたら迷惑かもしれません。
別に小説が好きでも何でもない人にとっては、
トルストイの写真立てなんか渡したら
あの異様なヒゲ面に驚いて突き返したくなるかもしれません。

フィッツジェラルドやヘミングウェイなんかはカッコいいですけど、
だいたいが文豪の写真には色気がないというか、
どうしてもおじいさんの写真が多くなってしまうというのが悩みどころです。
ですが、
写真の問題はさておき注文を待つ間のネタには多少なるんじゃないでしょうか。

ぼくは今この“名文章”を小説から抜き出しているところです。
これまで読んできた小説の中で好きだったものをもう一度読み返して、
これだという心を揺さぶる文章を選びたいと思います。

少なくとも20個は札を作りたいと思うので、
20人の作家を選びます。
一冊目に読み始めたものはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です。
おそらく20個できるのは、しばらく先、
来年の春には完成させたいです。

音楽の自分のベスト盤のプレイリストを作るのって楽しいと思いますけど、
その文学版みたいなところで、
ぼくは今この作業をけっこう楽しんでいます。

懸念はスタッフのみんなに文豪の顔が覚えてもらえるかどうか、です。
それこそトルストイとドストエフスキーの区別がつくだろうか?
ボルヘスとナボコフの顔の違いは覚えてもらえないだろうからどちらかにしよう。
などと考えて、なるべくスタッフも分かりやすくして、
ピザを届ける前に混乱をきたさないように考えています。

せっかく文豪札をお客さんに渡しても、
スタッフが戸惑って届けるのに時間がかかったら本末転倒ですからね。
まだしばらくかかりそうですけど、
きっとみなさんが楽しめるようなものを作りますので楽しみにしていてください。

2015年11月17日火曜日

文豪札

一ヶ月ほど前から、
「完成してから発表しよう」
と一人で地道に進めている計画があります。
こんなに楽しいアイデアを完成前に言いふらしたりなんかしたら、
誰かに真似されるんじゃないかとぼくは心配でしばらく黙っていました。

しかしよくよく考えたら、
こんなアイデアを実行する物好きはまずいなさそうだし、
むしろ真似なんかだれがするもんかと言われそうで、
ようやく頭の熱も冷めてきました。

どんなアイデアにしてもだいたい思いついたときは興奮して
ヤル気が湧いた状態になりますけど、
時間が経つと落ち着いて現実化に至らなかったということは
自分のことでも思い返してけっこうあります。

しかし今回のことは時間が経っても
「これを完成させるぞ!」という気持ちも薄れず、
できれば自分と同じように完成を楽しみにしてくれる人がいたらいいなと思って、
アイデア実現宣言のためにもブログに書いとくことにしました。

え?
それでどんなアイデアかって?
あー、言いたい。
早く言いたいですけどちょっと待ってください。
しぶっているわけではありません。
ただなぜぼくにとってこのアイデアが画期的に思えたのか、
その過程を知ってもらわなければぼくの気持ちの高ぶりも伝わりません。

これは〈石窯ピッツェリア・オーシャン〉にとっての三年越しの問題です。

ピザが焼けた。
さあお客さんのところに届けよう、火傷するかもしれない熱さのまま、
冷めないうちにまっしぐらにお客さんのところに届けよう!
——伝票にはお客さんの名前と特徴がメモしてある、
それを確認してお客さんを探す——
ピザを持って急ぎ足でデッキに運んだけどここじゃなかった。
このピザのお客さんは……どこだ!?
右往左往する。
ピザ冷める。

未熟な飲食店の典型です。
最近はこういう事態も少なくなってきたものの、
忙しい日は運ぶ場所を間違えて最短時間で届けられなかったりする。
こんなことでピザのいちばん美味しい状態が過ぎてしまうのは残念すぎます。

番号札はどうした?
テーブルの上に数字の入った立札の目印を置いておけば探しやすいじゃないか?
まずはそう考えました。
しかしオーシャンのスタッフの中には
「自分が番号で呼ばれるのは気持ちよくない」
という人が複数人いたこともあって、
この問題を保留にしていました。

ヒントはカリフォルニアのハンバーガーショップにありました。
パティに使う肉にこだわった店で、
チェーン店というほど大きな規模ではありませんが、
カリフォルニア内に何店舗かあります。

ここでぼくはアーティチョークとゴーダチーズのハンバーガー、
フライドポテト付き$9.88を注文しました。
そこで店員に渡されたのが写真立てです。
写真立てにはエルヴィス・プレスリーの顔写真が入っていました。

つまりこの写真立てをテーブルに置いておくと、
「お待たせしました、ミスター・プレスリー」
と若いウェイトレスが肉汁滴るハンバーガーを運んできてくれるというわけです。

周りのテーブルを見渡してみると、
ジミー・ヘンドリックスやマリリン・モンローの写真立てが置いてありました。
安っぽい、なんの変哲もない白いプラスチックの写真立てです。
だけど番号札を渡されるよりは、
テーブルで待っている間もしかしたら話しのタネになるかもしれませんよね。

はじめてのデートがこのハンバーガーショップのランチで、
緊張の沈黙から抜け出る糸口を、
写真立てのマイケル・ジャクソンが担ってくれることもあるはずです。
その写真立てのおかげで、とある男女は仲良くなり結婚して、
産まれてくる子供だっているはずです。

そんなふうに、番号札に子供を産ませることができるでしょうか?
きっとできないでしょう。

銀行とか役所の整理番号にもそんな小ネタが仕込んであれば、
「そんなことに経費を使うなら手数料を安くしろ!」と、
批判をするクレーマー同士のとある男女が知り合って、
仲良くなり結婚して子供を産むことだってあるでしょう。
きっとあるでしょう。

そういうわけで、
ぼくは子供の出産率だけにとどまらず、
何かのきっかけになる思索的な奥深さのある札が欲しいと思っていて、
ついに思いつきました。
それは文豪の顔写真を入れた写真立てを渡して、
番号札ならぬ文豪札にしようという目論見です。
〈つづく〉

2015年11月5日木曜日

来年はモーニングはじめます

モーニング営業を計画しています。
今までピッツェリアは11時オープンでしたけど、
来年の1月6日より9時からのオープンに変わる予定です。

9時から11時のメニューはピザではなく、
石窯で焼いたパンやシナモンロール、
他にもタルトなどを用意しようと思っています。

店舗の佇まいも変わります。
ピッツェリアはこれまで露天型というのか海の家風でしたけど、
壁を囲って、もうちょっと店舗らしくなります。
日差しがよく入る場所ですから、
壁で太陽を妨害せずに
明るくてぽかぽかするサンルームのような雰囲気にしたいと考えています。

海岸沿いの冬風は冷たいです。耳がもげるように。
露天型では寒さ対策が大変でした。
すきま風で暖房はききづらいし、
外席中心のピッツェリアは冬休んだほうがまだマシなぐらいでした。

それがちゃんと壁で囲われるとなれば、
居心地の良さはグンと高まるはずです。
冬どころか雨の日だってくつろげます。
今は玄関扉のない店で、
折り畳みの窓に取っ手を付けたのが入口です
(窓といっても1800㎝)。

折り畳みの窓ですから密閉性が悪いです。
日が暮れてあたり一帯が暗くなった夏の夜、
三河湾の虫が一斉にピッツェリアの明かりを目指して、
ガラス窓にぶつかってくるときもあります。

それが、玄関さえつけば、扉を閉ざすことができます。
ぼくはこの歳になってようやく扉にとって大切なことを理解しました。
扉は開けたら閉めなければならない。
これはセットだったのです。
開けたら閉める。

窓はそうじゃありません。
窓は開けっぱなしにしたり閉じっぱなしにしたりすることに向いていて、
海の家には非常にぴったりな出入口です。
海の家に扉は必要ありませんからね。
開けっ放しで、テーブルと砂浜と海がダイレクトにつながっているのが良い。

だけどピッツェリア・オーシャンは海の家としての存在から、
扉を一枚隔てた海の前のピッツァレストランにチェンジします。
外にダイレクトにつながる開放感は失われてしまうかもしれませんけど、
そのかわり、くつろげる居心地の良い店ができそうです。

そのため12月は6日で年内の営業を終了しまして、
改装工事などを含めて1月5日までお休みさせていただきます。
お店はお休みですけど、
ぼくはペンキ塗りや店の工事を手伝ったりしています。
ぼくは昔ペンキ屋でしたから、
こういうときに修繕費などをケチるのに役立っています。

ホームページも今更新中で、
もう少しで詳しい案内なども出せそうです。
よりより店作りができるようにがんばりますので、
今後もご贔屓にしてくださいませ。