2015年7月7日火曜日

偶然に運ばれて

「どうしたらピザ屋さんになれるんですか?」

と、お客さんで来てくれたお母さんと小学生ぐらいの男の子に聞かれて、
ぼくは間髪入れずにこう答えました。

「薪割りができるようになったらピザ屋さんになれるよ!」

だけどよくよく考えたら、
薪割りができなくてもピザ屋さんになれます。
薪割りの機械を買えば自分で割る必要もないし、
ガス窯を選べば薪自体いりません。

どうやらぼくは無意識的に、
ピザ作りの仕事と薪割りの仕事が同一化していました。
毎日続けている朝の15分の薪割りにぼくはプライドを持っているのか?
それとも、薪割りによって鍛えられた腕の筋力を自慢したいのか?
いや、違います。そういうわけではありません。

むしろぼくは薪割りの姿を見られるのが恥ずかしくて、
お客さんがいないところでこそこそやっています。
なんとなく、力強さのアピールをしているみたいで恥ずかしいので。
だからいつ見られても恥ずかしくないように、
なるべく最小限の動きで、あんまり力を振り絞らない動きで、
音もバコーン!と響かないように大根を縦にサクリと切るようなイメージで
日々の薪割りを行っているぐらいです。

なのにお母さんと男の子には
「ピザ屋は薪割りだよ」
と自らアピールをしてしまった。
まるで「ピザ屋は男の仕事だぜ」と言っているようなものですよね。
幸いにもこのお母さんは笑ってすませてくれたからよかったものの、
もしこちらのお母さんがフェミニストであったら
ぼくは激しく糾弾されたかもしれません。

ということで、ピザ屋になる秘訣は薪割りではありません。
ピザ屋は男の仕事ではありません。
なかには昔気質の人で男の仕事だという人もいるでしょうが、
現代では日本にかぎらずどこの国でも女性のピザ職人が活躍しています。

ではピザ屋になるためにはどうしたらいいのか?
ぼくはピザが好きなので「ピザが好きならなれるよ」という言葉が浮かびますが、
大成功しているピッツェリアの方がピザを食べることは好きじゃない
という人を知っているので好き嫌いは横に置いておきます。

でも他の人がどうピザ屋さんになったのか知りません。
自分の経験だけを考えみて、
薪割りができるという理由を外すと、
「偶然でした」という返答になってしまいます。

人から「ピザ屋をやったらいいじゃん」と言われて、
はじめて自分がピザを焼く想像をしました。
だいたいぼくは自分にはアイデアがないので、
人のアイデアを実行するほうが得意なのです。
というか、そっちのほうがただ楽なだけというのか。

ぼくは2年前に京都造形芸術大学の通信教育学部を卒業したんですけど、
そこの大学が発信している『アネモメトリ 風の手帳』というWEBページ
でこないだぼくのことを書いてくれました。
学校の卒業生にライターの方がインタヴューをするというもので、
ぼくはどうやってピザ職人になっていったのかを話しました。
よかったら読んでください。

「出会えた仕事を追求し“確信”を探す」

というタイトルで、
結論は偶然ピザ屋になったという話しです。

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