2017年3月25日土曜日

solosolo展示会②

「東京から長野の一軒家に移りまして、
隣接している土蔵を工房に改造しました。
水道をとおして、窓もなかったので穴を開け、
竈と暖炉をすえました。


草木染めの仕事は染料を作るところからはじまります。
僕は料理をやっていたこともあるんですけど、
染料作りは料理に煮ています。
枝や木や葉っぱなどいろんな植物を刻んで煮ます。


どんな植物にも色素は含まれていますけど、
季節によって同じ植物でも色が変化します。
皮や幹といった部位でも異なる。
これらの材料を藁切りをつかって細かく刻んでいくんですね。


僕らが住む山には染料で使う植物がいろんな場所にあります。
よもぎやすすきはそこらへんに生えていますけど、
この季節に山頂にいけばこの木の実がとれるとか、
この時期の山の中腹にはこの植物がとれるとか、
山菜をとりにいくような感覚ですね。
最初は山のどこに何があるのか分かりませんでしたが、
だんだん頭の中にフィールドができあがってきました。


家には畑があるので、
いずれ『染料の庭』ができたらいいなと思います。
いまは食べるものばかりなんですけど、
染料としてはマリーゴールドを育てています。
山や畑だけではなく、
たとえばカレー屋さんから出る大量のたまねぎの皮ももらいます。
これらの材料は煮立てて色を抽出し終わったものは、
畑の堆肥にもなりやすいですね。


僕の仕事の日課は8時に竈に薪をくべて火を起こすところからです。
(春夏秋のあたたかい時期の話しです。
冬はいちばん寒いときだとマイナス20℃にもなるので、
だいぶスローペースになります)


竈の上には水を張った寸胴鍋をかけておきまして、
硬い木や枝などは前日から漬け置きしていることもあります。
葉っぱなら鍋が沸いて30分ほどで色が出ますね。


暖炉にも火を起こして、別に染料を作る鍋を沸かしておきます。
そのあと、その日に染める生地の用意をします。
染めの模様付けのために『しぼり』を入れたり『板絞め』をします。
空いた時間で薪を割ったり、
すぐ裏の田んぼと畑の草取りなど。
10時ごろには火にかけた染料が沸いてできあがっているので、
染めをはじめます。


染物をする中でもっとも特別な時間が、
生地を染料に浸すときです。
白い生地に色を移すとき、必ず『お願いします』といってお祈りをします。
僕らが作ったものをお客さんは特別なものとして手にとってくれます。
僕もそれに応えられるように作るものに力をこめたいと思っています。


染めが終わったら、媒染という作業です。
草木染めにしたものは水溶性なので洗濯をすれば色落ちします。
媒染をすることによって色を定着させることができるのです。
そしてまた染料で染めて、また媒染という作業を少なくとも3回。
生地によって5、7、10回くり返して完成させます。


平日は夕方5時ごろまで。
忙しいときでも7、8時には仕事を終えるようにしています。
自宅と工房、田んぼ、畑が敷地内にありまして、
たまに買い物には行きますけど、
基本的な生活はこの中で完結しているんです。
だからあんまり仕事と休みの境界がないんですよね。


こういう生活が東京にいたときからやりたいと思っていたことなので、
いまとてもしっくりきています。
その分、あんまりずるずる仕事をやっていてもいけないので、
いま言ったように大まかですけど日課を作っています。


土日はイベントで出展に出かけることが多いです。
他には自治会や消防の活動があるので、休みらしい休みはないですね(笑)。


この自然の中で生活をすることの魅力は、
季節をダイレクトに感じられることです。
自然の魅力が作品に宿るように染物をするのは大きなやりがいになってます」


――ありがとうございました。


(スタッフがみんな買った人気の靴下)



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