2013年4月14日日曜日

物忘れ防止

物忘れが全般的に多いオーシャンのスタッフの中でも、
りょうちゃんは郡を抜いて忘れ物が多いです。
そして、そのことをまったく気にしないわけではなく、
一応それが悩みだとりょうちゃんは困った顔で言う。

先日、J子店長からりょうちゃんは、
「キャベツを持ってきてほしい」と頼み事をされました。
りょうちゃんに頼み事をする場合、
心構えとしては、
当てにしないことがなにより重要になってきます。

物忘れが多い集団なので、
みんながりょうちゃんをそのことで攻めたりすることはありません。
むしろ、「あ、この人は自分より物忘れが多いぞ」と、
「自分はそこまで物忘れが多い方ではないかも」と、
みんなの緊張感を解いてくれることに感謝するほどです。

でも、みんな社会人ですから、
それぞれ責任感は持っています。
いや責任感は人一倍強い人たちが揃ってる、
そう感じることすらあります。

「キャベツを持ってきてほしい」
そう言われたりょうちゃんの、
責任をまっとうしようとする姿を見れば、
きっと多くの人がうなずくのではないでしょうか。

りょうちゃんはすぐにカウンターのペン立てから、
[ゼブラ株式会社 ハイマッキー]
品番:MO-150-MC
特徴:太・細両用の定番品
税込価格:¥157
を手に取った。

彼女は太い方のキャップをむしるようにして抜くと、
左腕のTシャツの袖をひじの上までめくり上げて、
腕にでかでかとこう書いた。

『キャベツ』

僕が「でかでか」と言うのは誇張ではなく、
ほんとにでかでかと、です。
前腕にタトゥーを入れたように、
一文字の升目が約5センチ角サイズのキ・ャ・ベ・ツです。
〈刻印〉という言葉がふさわしいと思いました。

それでも彼女はキャベツを忘れた、
なんていうオチではありません。
りょうちゃんはちゃんとキャベツ持ってきてくれました。
なぜかモジモジしながら。

どうしたのかと聞くと、
腕にマッキーを強く押し付けたせいで
インクが洗っても消えない、と言いました。
しかも、この日にかぎってりょうちゃんは半袖でした。
薄くなった色でまだ『キャベツ』という文字が残っている。
だからモジモジしていたのだ、
とダジャレが言いたいわけではありません。

その日一日りょうちゃんは、
左腕を隠しながらホールサービスをすることになりました。
基本横立ちスタイル、という形で。

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