2013年4月12日金曜日

パセリのテラベーゼ

今年初のテラベーゼを出しました。
〈パセリのテラベーゼ〉です。
テラベーゼとはご存知ない方のために説明をすると、
ペスト・ジェノヴェーゼの寺部版ということになります。
オーシャン独自のソースを使ったパスタです。

独自のソースにしなければいけないのは、
ジェノヴェーゼの材料にチーズが使われてるからです。
オーシャンのベジ・パスタでは
チーズの代わりに自家製の白みそを使ってます。

赤いみそでは絶対にうまくいきません。
甘みがあってコクの出る自家製の白みそは、
パルミジャーノに引けを取らない旨味を持ってます。
それに香草とオリーブオイルとナッツにも合います。

テラベーゼではバジルにかぎらず、
パセリ、パクチー、紫蘇などの香草を使い分けます。
バジルはフルーツっぽい甘さがある。
パクチーには独特のクセがあって、
はまる人はこれがいちばん好きと言う。
断然香りが冴えるのはよく育ちもする紫蘇です。
やっぱり日本の気候に合った植物には
全身で訴えかけてくる風味があります。

今使っているのはパセリです。
ここ一、二週間ほどでパセリがみるみる育ちました。
パセリを味わうなら今はかなり良い時期です。

〈パセリ・テラベーゼ〉の特徴は軽い苦さです。
苦くて美味しいものには共通点があります。
コーヒー、ビール、たらの芽など新芽、
原種のサラダ菜、魚の肝、
どれも最初の一口が苦いわけではない。
最初の一口は、
甘かったり酸っぱかったりピリッとしたりする。

〈美味しい苦味〉は飲食物を飲み込もうとした時、
ミハエル・シューマッハが直線を抜けるように、
一瞬通過するポイントだというのが僕の認識です。
「余韻漂う」という形容詞がありますけど、
これは直線を抜けたあとの残響音です。

残響音が風味になる。
〈美味しい苦味〉は通過した後に苦味が消える。
でも〈不味い苦味〉は最初から最後までいる。
ぜんぜん抜けて行かない。
事故現場に差し掛かったみたいに、
こっちはオロオロしてしまう。
そういう〈不味い苦味〉を〈えぐい〉と言ったりする。

〈美味い苦味〉は抜けきるので、
後に残る風味を邪魔しない。
そこで、僕は一つ、謎の正体に近付いた気がします。
風味とは何物か、という謎です。
それは「風味とはどこで感じるものか」という
問いで近付くことができると思う。
あの抽象的な、有るのか無いのか、
匂いなのか味なのかよく分からんもの、風味。

風味が残響音だとしたら、
風味は食べ物を飲み込んだときに感じるもの、
つまり喉で感じるのか?
いや、喉より前だと思う。

舌の奥よりも奥、
喉よりも手前。
そこに何があるか。
そこにはノドチンコがあった。

思えば、ノドチンコは何のために存在しているのか。
発音のため、誤飲の防止のためというけど、
僕はそれだけではないと思う。
このノドチンコと風味には関係があるんじゃないかと思う。
もしくはまったく関係無いかもしれない。
ノドチンコは、まあどっちでもいいです。
ともかくその周辺。

「鼻を通る」と言ったりしますけど、
この言葉は香りが鼻をリバースするときに使います。
この「鼻を通る」まさにその時、
食べ物は喉に向かって一直線。
その最終コーナー、ノドチンコ―ナーを曲がりきった後に感じる。
その時風味は立ちのぼると思う。

それは匂いだけでも味だけでもない。
風味は立ちのぼって、鼻の穴から抜け出る。
風味とは吸って感じるものではなくて、
舌の上で感じ取れるものでもない。
風味は響き、反響、木霊することに近いです。

今日はノルマ以上に書きましたので、
後は〈パセリ・テラベーゼ〉を食べてください。

2 件のコメント:

  1. 深みのある苦さ表現 レジーミラーの3リーポイントのように つたわってきました。

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  2. あの深さから放つレジー・ミラーの3ポイントは感動的です。ありがとうございます。そのうちダンクも決めたいと思います!

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