2012年10月25日木曜日

葬儀会社の広告

ガルシア=マルケスの自伝の、
『生きて、語り伝える』は傑作で、
開くページ毎にポエティックな文章が踊り、
コロンビアの信じられない家庭環境が渦を巻いて、
本の奥に引きずり込まれます。

ブログに何を書こうか困ったときにこの本を開けば、
たちまちランプから文豪の魔人が現れて言葉をくれます。

一九三五年のコロンビアのバランキーヤという町の話しです。
町は開発されはじめてラジオ局や水道網が設置されて、
新しく舗装された幹線道路もできた頃でした。
消防隊がサイレンを鳴らせば子供も大人もお祭り騒ぎになり、
法律もろくにない時代、車は狂ったように走り回っていた。
そんな中こんな広告が設置されたそうです。

「葬儀会社のラ・エキタティーバ社は死のユーモアを着想して、
町の出口に巨大な広告を出した——
〈飛ばすな、私たちが待っている〉」

かなり気が利いてます。
こんな広告がある町の景色はさぞかし楽しいんだろうなと、
夢想してしまいます。

それに比べて日本の葬儀会社のコピーはどんなものか。
〈さようならが、あたたかい・・・〉
〈私たちは最後のお別れをお手伝いします。
そしてそれにとどまらず、
人生のマイナスからプラスへの、ステップを支えます〉

一体なんだこれは、気持ちがわるいじゃないですか。
なんでもかんでもポジティブにすればいいってもんじゃないはずです。
なんか他に葬儀会社の良いコピーがないもんでしょうか。
〈私たちは地獄の門の、最後の砦です〉とか、
〈はじめまして、弊社は死者担当昇天社〉みたいな語呂の良い感じとか、
どうですか、よくないですか。

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