2013年11月3日日曜日

牛と忍者の壁

米原万里という人の『言葉を育てる』という本を読んでます。
その中の糸井重里との対談の中で、
どんな牛のミルクが美味しいかという話しがありました。

「急斜面で牛を飼うという牧場があるんです。
一番ひどいところだと、四五度の傾斜のところに牛がいるんです。
これはねえ、牛、実はご機嫌なんです。
自分の生きる力が呼びさまされるんです。
牛って暇ですから、
別にどこかに行くのに時間かかってもいいですし」

それは忙しい牛に失礼な話しなんじゃないかと思うんですけど、
負荷がかかると生きる力が呼び覚まさされるというのは、
つい楽を選びがちな僕はよく忘れる話しです。
昔僕は公園のアスレチックで遊ぶのが好きでした。

西尾の八ツ面山にあるアスレチックパークには
[忍者の壁]という凹凸がついてロッククライミングみたいに
登れるようになっている壁があるんですけど、
特に好きなのがそれでした。

他にも棒にぶら下がって空中をクリフハンガーみたいに
滑っていくようなものとか、
細い紐をバランスを取りながら歩いて行くようなものとか、
派手なものもけっこうありましたけど、
僕は凹凸がついた壁を登るときが一番ご機嫌でした。

小学生の頃この忍者の壁の裏で首を吊った人がいると聞いて、
僕は忍者の壁に登れなくなりました。
それからしばらく経って高校ぐらいの年代だったと思いますけど、
夜中に懐中電灯を持って、
この忍者の壁の裏側をのぞきに行きました。

光を向けると、
壁の裏には奥に続く林があって、
のっぺりした壁があるだけでした。

僕はさらにこの林の奥に入っていきました。
昼間に見ると木は少ないんですけど、
夜になると森に入ったような感覚になります。
途端に僕は怖くなって走って戻りました。

忍者の壁の後ろには死。
牛は傾斜でウシッシ。

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