2013年12月26日木曜日

ミスター・オーランドのコレクション

鈴木くんの家の近所に[ガバチスナック]という店があります。
ガバチがどういう意味か店主に聞くと、
娘の名前だと言っていました。

ここはピザ屋であり駄菓子屋であり、
卓球台にモノポリー、チェス、バックギャモン、トランプを置いて、
地元のゲームセンター的役割も果たしています。

経歴を聞くと話しが止まらないほど話してくれました。
要約すると彼はベネズエラ、コロンビア、アメリカ、ベリーズ、
四つの国籍を持ち、
各国を渡り歩いて料理をしてきたそうです。

シェラトンホテルのレストランで腕を振るい、
ワールドトレードセンターが崩壊する三時間前まで
そこで料理をしていたと言っていました。

店主のミスター・オーランドは
色んな武勇伝を語ってくれましたけど、
面白くない大人の自慢話とは違って、
少年が特別な秘密を人に教えるときのように輝いてました

ミスター・オーランドの少年っぽさは、
まず身長が150センチほどしかないところが少年のようです。
そしていつも被っているベースボールキャップと、
口を開けて歯をのぞかせて笑う顔が少年のようです。

それに加えて、
毎回お店に行くたびに卓球の勝負を申し込まれるところもそうです。
僕は二度お店に行っただけですけど、
どっちのときも疲れていて断ってしまいました。
断ったのに悲しそうな顔をせず、
開いた口から歯を見せて笑顔でうなずくだけなのがまた、
とても申し訳ない気持ちにさせられました。
三度目は必ず申込みを受けようと思ってましたけど、
残念ながら叶いませんでした。


ミスター・オーランドの少年っぽさはそれだけじゃありません。
僕らが厚い生地のアメリカ風ピザを食べていると、
彼はリスが大きなドングリを抱えるような感じで、
分厚いファイルを抱えて持ってきました。
それは自慢コレクションでした。

僕らには食べてていいよと言って、
自分でファイルをめくって解説をはじめてくれました。
それは「紙幣」のコレクションです。

大きいお札、小さいお札、
地味なお札、派手なお札、
どこの国か分からないお札がびっしり詰まってます。
その途中で「ジャパニーズ」と言ってファイルをめくるのを止めて言いました。
見ると確かに「THE JAPANESE GOVERNMENT」と書いてあります。
これは「ペソ」でした。
日本がフィリピンを占領したときに発行したお金でした。


またページをめくると、
日本円で「軍用手票」と印刷されたものもあります。
これも僕ははじめて見ました。


さらにめくっていくとフセインを見つけました。
南極のお金もありました。
これはもう紙幣というより、
水族館の入場券みたいです。




これだけ集めるのにいくらかかったのかと聞くと、
ミスター・オーランドは子供のようにへへへと笑って
「75,000USダラー」
と言いました。

僕はもう一回聞き返してから、
手帳に数字を書いて確認してもらいました。
やっぱり「75,000USダラー」と言ってます。
約七百五十万円だそうです。

実はもう一つファイルがあって、
そっちに高額紙幣を入れて、
母国ベネズエラの銀行のプライベートボックスに預けているそうです。

このとき見せてもらった中で一番高額だったのは
1000USドルでした。
これよりも高額だったり、
希少価値があればそれぐらいになるんですかね。

大人が子供の求めるものを大量に買うことを大人買いと言いますけど、
この人は大人が求めるものを子供のような純真な気持ちで
買っているんだなと思いました。

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