2013年5月29日水曜日

糞化石が物語る

ジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊』は、
マヤ、イースター島、グリーンランドといった、
一時は人口が増えて栄えた場所を取りあげて、
何かの拍子でぱったり消息を消してしまった謎を探るという内容です。

文明が崩壊するには複雑な要素が絡まりあうと言っている。
ダイアモンドは「社会機能の崩壊の枠組み」として、
五つの視点を取っている。

①森林破壊と浸食
②気候変動
③土地内部の争い
④政治・文化的要因
⑤友好的な交易の中止

こういう要因があったのかどうかは、
地面から掘り出したものから想像して探る。
そこから仮想される物語が面白い。

「峡谷の住人たちの栄養摂取の問題が深刻化していたことは、
遺跡から出た廃棄物に含まれる食料に占めるシカの割合が減って、
代わりにもっと小型の獲物、
特にうさぎやネズミが増えているのだ。
ヒトの糞化石(便が乾燥状態で保存されたもの)から、
頭部以外は完全な形のネズミが出ていることからして、
住民たちは、野原でネズミを捕まえると、
次々に頭をもぎ取っては丸ごと食べていたと考えられる」

どうしてグリーンランドに住んでいたヴァイキングが、
十四世紀に全滅してしまったのか。
農産物が不作で食料を蓄えれずに冬を迎えてしまったことが
こういう糞化石を残した要因だという。
糞化石のすごさ。
気候変動まで特定してしまう。

「秋のシンリントナカイ狩りに必要な犬を殺し、
育てるべき家畜の新生児を殺すことで、最後の住人たちは、
先のことなど気にする余裕もないほど空腹だと訴えているようなものだ。
遺跡のもっと下の層では、
人間の排泄物にたかるハエの中に温暖さを好む種が多く含まれるが、
最上層では寒さに耐性のある種だけに限られており、
この事実は、住民たちが食糧だけではなく
燃料も使い果たしてしまったことを示している」

糞二つでこんな違いが分かってしまうとは、
すごい仕事ですね、ウン考古学。

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