2013年1月29日火曜日

冬が二倍冬になる映画

昨日は『竹山ひとり旅』を見ました。
冬の夜に見て、
これほど寒々しい気持ちになる映画もそうはありません。
監督は新藤兼人で1977年の公開。
三味線の名人の実話ストーリーです。

ひたすら雪景色。
95%雪景色です。
冬の青森と冬の北海道、
つい見ているこっちも暖房を強くしてしまう。

三味線弾きの竹山はボサマと呼ばれる業で、
家を一件々々回って玄関の前で演奏して、
それでご飯や芋や汁をもらう。
もらえる頃には体中に雪が積もっている。

それにしても、青森に住む竹山がボサマとして稼ぎに出るとき、
冬の寒い季節にも関わらず南に下るのではなくて、
北海道に上っていく。
なんでわざわざ寒い場所に行くのか?

寒い場所の方がボサマとして食い扶持が稼げるのか。
雪が降ってるからみんな家に閉じこもって、
電気もない陰気な気持ちでヒマを持て余してる。
そこに三味線を鳴らして歌を歌うと、
何かあげたくなったり家に入れてあげたくなったりする、
そういうことでしょうか。

この映画でいちばん引きつけられるのは、
出てくるご飯がやたらと湯気を立ててうまそうに見えることです。
寒いせいであったかいものがまっ白に湯気を立てる。
竹山が浜のボロ小屋で野宿をしているときに、
焚火の上に鍋を置いて米を炊き、
みそ汁を作る場面があります。

鍋の沸いた湯の中に、
腹巻きから取り出した味噌の塊(目視で500g)を放り込んで、
これまた下駄ぐらいの大きさの豆腐を
外で拾ってきた長い木の板でぶつ切りにして、
鍋に放り込む。
これを木の板でぐるぐるかき回す。

できたみそ汁を錆びてまっ黒になった空き缶ですくって飲む。
米は帆立貝の殻のようなものをお椀の代わりにして食う。
この寒々としたボロ小屋に白い湯気がモクモク立って、
数少ないからだのあったまる場面に若干ほっとできる。
でも、そういう食べ物を食べる時間以外の95%は寒そうです。

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