2014年1月30日木曜日

畑の隅のF1トウモロコシ

十年ほど前に宮本さんがトウモロコシと会話をした話しです。
宮本さんが畑をはじめてから軌道に乗ったとき、
F1種のトウモロコシの種を手に入れました。
当時宮本さんは在来種ではなく品種改良されたF1種に対して、
「ホンモノではない」という批判的な考えを持ってました。

だけど一回自分でも育ててみなければいけないと考えて、
十何種類かの在来種の野菜が植わっている畑の一角に
そのトウモロコシの種を蒔きました。
芽が出てトウモロコシが成長するまで宮本さんは、
「彼のことを憎んでいたと言っても過言ではない」
と言っていました。

月日は経ち、
夏になって伸びたイネは黄色い実を結びました。
宮本さんはいつも通り水やりをしていました。
トマト、ズッキーニ、ナスなどに水を撒いているときです。
誰かが宮本さんに話しかけました。

パッと後ろを振り返っても誰もいません。
宮本さんが辺りを見渡していると、
そこでまた声が聞こえてきました。
今度はその声を聞き取ることができました。

「何でぼくは違うんだろう」

かわいらしい、だけど悲しい声でそれは言いました。
宮本さんはその声を辿るまでもなく、
誰が話しているのか分かりました。
視線のすぐ先には立派に実を結んだトウモロコシがいました。
宮本さんが目の敵にしていたトウモロコシです。

だけど彼(トウモロコシ)は卑屈になるでもなく、
ひがむでもなく、いじけるでもなく、
純真なまでに清らかな声で言いました。

「何でぼくは違うんだろう」

宮本さんは手に持っていた如雨露を落とすと、
散水スプリンクラーのように涙が溢れて止まりませんでした。
宮本さんはトウモロコシとしばらく見つめあってからこう言いました。

「君は何も悪くない。
悪いのはこの社会のシステムなんだ。
君は君のままでいい」

そして宮本さんはトウモロコシを抱きしめた……。
と、までは言ってませんけど、
それぐらいの感動的な会話をしたことがあるそうです。
農業との向き合い方が変わった一つの出来事だそうです。

次回のブログは「宮本さんネズミを説得する」の巻です。
宮本さんは農業と純粋に向き合ってた頃、
動物とも植物とも心を通じ合わせることができると言ってました。
最近は農業もちょっとこなれてきたから会話が出来ないそうです。

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